ムツモンオトシブミとハクサンカメバヒキオコシの翻訳機

この作品は、ムツモンオトシブミによる葉の加工とハクサンカメバヒキオコシの関係性の翻訳機としてアンビソニックマシンを制作。アンビソニックとは一般的にイマーシブ 3D オーディオのフォーマットとして知られているが、この作品ではオブジェクトとそれを取り巻く環境 情報の録音・再生するフォーマットとして解釈し、アンビソニックマシンと名付けた。

それは人間が知覚するには小さすぎるスケールで行われている関係性や、長すぎることで 知覚することのできない現象などをアンビソニックマシンを通じて、認識できる形に変換 し、それらを音楽として捉え直すことである。

このシステムではムツモンオトシブミという甲虫が植物の葉を巻いて” 揺籃” をつくる 際に行う、歩行 ( 踏査 ) の動きをトラッキングし、図形譜面の書かれた葉の上を オトシブミが移動することで音楽が演奏される。葉の形状が異なる植物二種 ( ハクサンカメバヒキオコシ、クロバナヒキオコシ ) によって、 オトシブミの歩行が変化し、異なる音楽が展開される。研究者の樋口裕美子先生が録画したデータを解析した2mixの音楽作品。

Soundtracks

安齋励應(Reo Anzai)ミュージシャン、DJ:「アンビエント・ミュージックとは、人間が認識できるアルゴリズムに組み込むことで、地球規模の生態系と共存しながら再生される音楽である」という仮説に基づいた制作をしている。この仮説はブライアンイーノが 1976 年に雑誌「Studio International」に登載した論考である「Generating and Organizing Variety in the Arts」を元に着想を得ている。本論考では楽譜を組織として捉え、クラッシック音楽から実験音楽までの「音楽」を組織とし、その組織の環境適応性や自己安定性が異なっていると論じている。 そして「変化する環境には適応力のある生物が必要である」という前提を元に、アンビエ ントミュージックの着想となる自生的で変化が起こり続ける音楽の提案をしている。